浅田次郎先生の小説から……

浅田次郎先生の短編集『あやし うらめし あな かなし』(集英社文庫)の中にございます『遠別離』に、

[歴戦の下士官の鋼のような体は、闇の中でも威圧感を放っている。将校とは違う基準の貫禄である。簡単に言えば、〈将校は尊い人だが下士官は偉い人だった〉。]

 という文章があります。

 

ぼんやりと認識している〈尊い〉と〈偉い〉の違いに、はっとさせられました。

 

城山三郎先生の、『粗にして野だが卑ではないではない 石田禮助の生涯』(文春文庫)の、〈粗〉〈野〉〈卑〉にも、目から鱗が落ちるような衝撃を受けたことを思い出しました。

 

京都銀行のコマーシャルでも、

「汚れても汚くはないユニフォーム」

という川柳がありました。

 

そんな例を考えると、

 

「〈失望〉はしたが、〈絶望〉したわけではない」

 

とか、

 

「〈悲しい〉できごとにちがいないが、〈哀しい〉とは思わない」

 

とか、

 

「確かに〈きれいな人〉だけれど、だから〈美しい人〉だとは言えない」

 

とか、

 

何となく似たようなイメージで使っている言葉を対立的に並べてみると、言葉について新しい発見ができるのではないかと思います。

 

ごめんんさい。

 今日は、それだけでオチはありません……