〈幕使いの多恵子〉
と呼ばれる女掏摸師が捕まったというニュースがありました。
服などの商品で手許を隠して掏り盗るところから、こう呼ばれているそうです。
盗人の噺は落語にもありますが、掏摸の噺となりますと、やっぱり『一文笛』かと思います。
二代目の三遊亭圓歌師は、市電に乗っていて懐中時計の中身だけ掏られたというエピソードをお持ちで、桂米朝師もマクラでお話なさっていました。
掏摸の基本は、指を使って財布等を掏る抜き取りで、時代劇なんかでも、雑踏でぶつかった相手の懐から財布を抜き盗るなんて場面がありました。
その訓練で、どんぶり鉢に入れた砂の中に指を突き入れて自在に動かす訓練をしているてなシーンを目にしたこともあります。
刃物を使った切り取りという方法で財布を奪うのも掏摸の方法の一つだそうですが、手技をもっぱらとする者からは、一段蔑まれている、なんて話も、どこかの小説で読んだようにも思います。
今回捕まった〈幕使い〉というのは、昔から存在する方法なのか、それとも捕まった当人の工夫なのかはわかりませんが、基本はあるけれど独自の工夫によって名を知らしめるというところは、どの世界でも共通するのではないかと……
ぼか! どす! ごん!