河井寛次郎記念館レポート

んでもって、河井寛次郎記念館のお話でございます。

 

これも美里嬢の紹介で、

「登り窯が見られる」

という話に惹かれてまいりましたら、登り窯もなることながら、展示されている河井寛次郎先生の御作品にも感嘆いたしました。

焼き物ももちろんよろしゅうございましたが、後年、仮面を作ったり木彫をしたりと、そっちの作品もおもしろうございました。

と申しますのは、その仮面が、国立民俗学博物館で見た遠い異国の仮面と同種に思われまして、戦争を挟んだ昭和の初期に御覧になってモチーフにされたのか、と驚きもしたからでございます。

 

床の間に掛けてありました軸には、〈楽在其中〉と書してあり、同じ部屋にございました作品集に掲載されておりました、〈手考足思〉という詩の、

 

《好きなものの中には必ず私はある。

 私は習慣から身をねじる、未だ見ぬ私が見度いから。》

 

という一節を目にいたしまして、夏目漱石先生の『夢十夜』の第六夜にございます、運慶が仁王を彫っているのではなく、埋まっている仁王を運慶が木から彫り出している、という話を思い出しながら、

河井寛次郎先生は、御自分の言葉を持っていらっしゃる方なんだ……」

と感極まって、しばらくその前から離れることができませんでした。

また、訪ねたいと思っています。