私は、[ことのは学舎]の、Mr.?(ミスタークエスチョン)である。
かつて人気を博したテレビアニメ、[タイガーマスク] に登場したインドの覆面レスラーをイメージしてもらってもいいだろう。
過日、奈良は興福寺の国宝館に立ち寄った。
仏法を守護する八部衆の真ん中に、例の阿修羅が立っていた。
三面六臂のその姿は、明らかに他の八部衆とは違う。
他は、皆、二本の腕に顔は一つ。
それぞれ、同じような鎧を身にまとって靴を履いているのに、阿修羅だけが、インドの、通常と思われる衣服を身につけ、足には草履を履いている。
なぜ、阿修羅だけが他の八部衆とこれほど違うのか?
仏法を守護するという本来の八部衆の役割を考えると、もしかすると、興福寺の阿修羅は、八部衆とは関係のない、まったく別の物ではないのか?
もしかすると、作成を依頼した者が違うのか、あるいは八部衆の一つではあっても、その意図が阿修羅だけ別にあったのか?
「お前はいったい何者なのか?」
直接、問いかけても、彼は応えない。
おそらく、調べればわかることだろうし、これが我々の日常生活に影響を及ぼすこともない。
こんな愚にもつかぬ疑問を、ふと呈するが故に、私は、[ことのは学舎]のMr.?、と呼ばれている。