悪い結果を招くかもしれない不善に気づかず閑居する小人

 高校で所属していたクラブの娘さんが卒業するので、その保護者(主にお母様方)が集まって、卒業記念の何やかやを作る作業をさせられたという方が、

「高3の娘にそこまで親がしてやるというのは、どうなんでしょうね。放っておいていいように思うんですけど……」

 と、先日、おっしゃっていました。

 それで、

 [小人閑(間)居して不善を為す]

 てな言葉が、ふいっと脳裏をよぎりました。

 『小人』は〝つまらない人物〟〝徳や品性のないない人物〟を意味し、〝暇〟であることを『閑居』と言います。もともとは門構えの中には月、あるいは『間居』と書いて〝独り暮らし〟を意味するようですが、一般には、

「つまらない(独り暮らしの)人間が暇になるとよからぬことをする」

 と解釈されています。

 閑居、間居、いずれにしても、つまらない人間が暇を持て余してしでかすのは、不善、よくないこと、ためにならないことです。といっても、決して悪事ではありません。悪事なら具体的なイメージができます。

 しかし、不善、はどうでしょう。酒に溺れるとかギャンブルにのめりこむとか、そんなことが考えられます。もちろん、その先に悪事が待っているかもしれませんが、そこには、まだ至りません。

 けれども、酒やギャンブル以外にも、もしかしたら、悪い結果を招くかもしれない不善があるのではないかという気が、以前からなんとなくしておりました。

 卒業を間近に控えた高校生に、積極的にそこまで手をかける保護者は、おそらく、家でも同じようなことをしているのではないかと思います。つまり、余計なお世話を焼いて、もしかしたら、本人の自主性、言い換えるなら、選択肢を考えて自分の意志で選ぶことを阻害し続けていることに気づかぬばかりか、自分はよいことをやっている、と信じているのではないでしょうか。

 また、そこまでする必要もない、放っておけばいいとお考えの方にとっては、保護者が集まって我が子の高校卒業記念に何かしてあげようという企画に巻き込まれるのは、時間を取られるだけの、迷惑な話ではないかと思います。

 ほんとうは自己満足でしかないのに、子どもたちが喜ぶだろう、と勝手に思い込んで、そうしたことを積極的に推し進めようとされる方こそ、暇を持て余している**、と言えるのではないでしょ……

 

 例のごとく例の友人にここまで話しましたところで、

「キミは、世の中のお母様方の大部分を敵に回すつもりなのか?」

 と、レッドカードを突き付けられました!