授業で近代文学史を講じる国語の先生の中には、
「明治時代、日本で最初に言文一致体で小説《浮雲》を書いた二葉亭四迷(ふたばていしめい)のペンネームは、文学に理解のなかった父親から『くたばってしまえ』と言われたことに由来する」(別の由来説もあります)
と、エピソードを紹介される方がいらっしゃいます。
紹介する先生もそれを聞いた生徒も、
「面白い」
という感想を持つだけで、それ以上のことは考えないのではないかと思います。
もし、このエピソードの通りだとしたら、父親は文学に理解のない無教養な人物だということになりますが、時代は明治時代。欧米から新しい学術技術文化が日本に入ってきた時代です。
小説もその中の一つでした。
それまでになかった新しいことに人生をかけようとする子供に反対するのは、父親として当たり前です。
その父親が発した言葉を、そのまま自分のペンネームにしたところに、二葉亭四迷の覚悟が読み取れるのではないかと、私は思います。
新年を機に新しいことを始めようとするなら、覚悟と強さを必要とするパイオニアを目指すのが面白いと思いますが、いかがでしょう。