落語に『子ほめ』という噺があります。
実年齢より二つ、三つ若く言うと、相手は喜んで、お酒をごちそうしてくれるということで、
「おいくつですか……四十?……とはお若う見える。どう見ても三十七、八……」
実年齢より若く見られることを喜ばない人は、それほどいらっしゃいません。
ですから、女性に、
「いやあ、お若く見えますね。まだ二十七、八ぐらいかと……」
と、ぬけぬけと言える輩には下心のある〈けしからん奴じゃ〉という風潮が世間にあります。
先日、顔見知りの四十代の女性と、お話しする機会がありました。
普段、自分の年齢を二十五と称して明るくふるまっておられますが、実は、一家心中をお考えになったほどの人生を歩んでおられて、
「まあ、人生五十年ですから、それぐらい生きられたらいいかなと思っています」
とおっしゃいましたから、
「ということは、あと二十年は生きないといけないということですね」
と、ぬけぬけと申し上げますと、
「いいえ、二十五年です」
と、おしゃって、彼女は私にお菓子を持ってきてくださいました。
お酒をごちそうしてもらうためには、いったいどれほど若く言えばいいのでしょうか……