三題噺・家政婦は見た喫茶

改めまして、『黒幕』『メイド』『土産』。

 

清「へえ、このへん、メイド喫茶が並んでるんやな。まあ、せっかく日本橋に出て来たんやから、土産話にちょっと寄ってみよか。……あれ、誰やこっち、覗いてんのか」

メ「あーら、お帰りなさいませ」

清「お帰りなさいませ……て なんや、ここもメイド喫茶か?」

メ「そうです」

清「さっき覗いてたん、あんたか?」

メ「メイドのお咲で〜す」

清「えらい年増のメイドやな。ここ、メイド喫茶やのうて、ほんまは家政婦は見た喫茶かなんかやないんか」

メ「あ〜ら、家政婦は見た喫茶やなんて、おもろいこと言うてくれるやおまへんか、ご主人様」(にちゃ〜と笑う)

清「にちゃ〜て笑うな、にちゃ〜て」

メ「ほな、中でべちゃ〜ってゆっくりしまひょか、ご主人様」(店内に引っ張り込む)

清「お、おい、何をしてくれるんや」

メ「何って、くつろいでもらうに決まってるやないか。ご主人様」

清「くつろぐって、お前、この店、えらい暗いで。それになんや、店の奥に掛かってる黒い幕。あそこから、誰ぞ覗いてて、そいつが家政婦は見た喫茶の、ほんまの黒幕や、なんてしょうもないこと言うんやないやろな」

メ「おほほほほ…… ほ〜まにおもろいな。ご主人様」

清「ちょっと、待て。お前、ご主人様、ご主人様、言うてるけど、ほんまはカモやと思うてるんやろ」

メ「あ〜ら、カモやなんてとんでもない、ご主人様」

清「わいはご主人様やない。もう帰る」

メ「ちょっと、帰るって、どこに帰るの、ご主人様」

清「よそのメイド喫茶や」

メ「そ、そんな〜」

男(黒幕の中から出て来て)「こら、お咲、えらいてこずってるやないか」

清「お、やっぱり出て来たやないか、黒幕」

メ「その人は黒幕やおまへん」

清「黒幕やなかったら、そいつはなんや」

メ(膝まづいて)「ご主人様」

                                   デンデン