結婚式のシーズンです。
少し規模の大きな居酒屋なんかに参りますと、披露宴の二次会、三次会と見られる若い人の集団を見かけます。
おめでたいムード一色で盛り上がっているその団体を横目にトイレに立ちますと、礼服のネクタイをゆるめた若い男性二人が、用を足しながら話をしています。
「普段はあんまり酒なんか飲まへんのに、ツヨシの奴、今日はもう、ぐでんぐでんに酔っぱらってるな」
「知らんかったんか?」
「何?」
「ツヨシ、新婦のリカのこと、ずっと好きやったんやで」
「へえ」
「二人、こっそりつきあってた時期もあったんやで」
煙草を吸いに外に出ますと、やはりその一団の女性が二人、煙草を吸いながら話をしております。
「今日のカスミ、やけに明るいわね。いつもはあんなにはしゃがないのに……」
「知らないの?」
「え?」
「カスミ、新郎のダイスケと、以前、つきあってたのよ」
そんな話を耳にして、一年後、同じ居酒屋で一杯やっておりますと、また、披露宴の流れと思われるにぎやかな団体が入ってきました。
どこかで見たことがある顔があるな、と思っていたら、
「ツヨシ、おめでとう!」
「カスミ、幸せになってね!」
という声を耳にして思い出しました。
去年、やはりここで盛り上がっていた一団です。
しばらくしてから、その彼らを横目にトイレに入ると、若い男性二人が、
「ツヨシとカスミの結婚式やのに、ダイスケとリカ、なんや、冷めた感じやな」
「お前、知らんのか?」
「ん?」
「ダイスケとリカ、三か月で別れたんやで」
てなストーリーを考えつきましたが、さあ、ここから甘酸っぱい青春物語は続くのか、それともドロドロの不倫ドラマになってしまうのか、はたまた殺人事件が起きるミステリーに発展するのか……
どう料理しても、ありきたりになってしまうんですよねぇ……