三題噺・休憩中

お題をいただきました。

 

『カレー』『名刺』『戦国時代』

 

喜・清やん。

清・何や。

喜・わい、名刺、作ってん。

清・こんなときにいきなり名刺、作ったって、そらどういうことや。

喜・まあ、見て。(名刺を渡す)

清・(受け取って)なんや、ひらがなで、きろく、て書いたあるだけないか。

喜・いや、ほんまはちゃんとした肩書きを入れたかったんやけど、そんなもんないさかいに、こないしてん。

清・何を言うてんねん。お前には立派な肩書きがあるやないか。

喜・何?

清・きろくの前に、あほの、と付けとかんかい。

喜・あほのきろく……あのな、清やん……

清・いや、それよりも、なんでこないなときに名刺がいるんや。

喜・なんでて、この映画のロケが終わったら、皆で打ち上げするやろ。そんときに、映画監督から、あんさんどなたでっか、て聞かれたら、やっぱり名刺の一枚は渡さなあかんやろ。

清・やっぱり名刺に、あほの、と入れとけ。いったいどこの監督がこんなあほのエキストラに声をかけるんや。

喜・せやけど清やん。もしかしたらわいのこのぞう…… ぞう…… ぞう……

清・雑兵か。

喜・そうそう、そのゾウとヒョウ。

清・ここは動物園やないぞ。

喜・いや、ひょっとしたら、そのゾウとヒョウのかっこが似合う言うて、監督から声をかけられるかもしれへんやないか。

清・かけられるとしたら、こえつぼの肥や。

喜・こえつぼなんて、きょうびあらへんで。

清・今、撮ってるこの時代やったら、それがあるんや。お前、わかってるか、何時代か?

喜・確か……せん……せん……

清・戦国時代や。ほんでこの戦国時代から現代にタイムスリップして、それから未来にまたタイムスリップするっちゅう映画や。お前、わかってへんやろ。

喜・清やん。

清・何や。

喜・(懐からカレーパンを出して)カレーパン、食うか?

清・何やねん。急に。

喜・こえつぼで思い出した。

清・汚い奴やな。

喜・せんべいもあるで。

清・そら、戦国時代で思い出したんか。

喜・なんでわかったんや。

清・誰でもわかるわ。あほ。けど、お前、いくら休憩中でも、いくさの最中にカレーパンを食う雑兵はいてへんで。

喜・ほな、何、食べたらええんや。

清・そら、この時代やったら、にぎりめしやろ。

喜・ああ、そうやな。(懐からおにぎりを出しながら)コンビニのおにぎりやったら……

清・お前の懐はドラえもんの異次元ポケットか。そんなもん次々出すな。

喜・そやけど、清やん、この映画そのものが、異次元やんか。

                                   デンデン