お題をいただきました。
『スピード』『電柱」『たこ焼き』
喜・明けましておめでとうございます。
甚・おお、誰や思たら、喜ィさんやないか。ほんに新年、おめでたいな。
喜・ほんで、甚平はん……
甚・年明け早々、新しい商売の相談やったら、よそへ行ってや。
喜・なんでわかりましたんや。
甚・そらわかるわ。喜ィさんが来るとき言うたら、新しい商売の相談や。
喜・そうですかいな。
甚・そうですかいなて、わし、忘れもせえへんで。ありゃ紅葉のきれいな季節やったかいな、落ちてるもみじ集めて売ったらもとでもかからへんさかいにええんちゃうかと思いまんねん、言うさかいに、落ちてるもみじなんて、誰が買うんや、て聞いたら、さあ、それをあんたに相談に来ましたて言うたな。
喜・ああ、そないなこともありましたな。
甚・年末にも来たな。
喜・ええと、何でしたかいな。
甚・新年会忘年会目当てに、てんすき、天狗を食わせる店始めたら、珍しいさかいに売れますやろ、言うたやないか。
喜・ああ、そうでしたかいな。
甚・そんとき、どこで天狗を捕まえるんやて聞いたら、さあ、それをあんたに相談に来たんやてな話したん、もう忘れたんか?
喜・ええと…… そやさかいに、今日は、そないな落語のネタみたいな商売やのうて、ちゃんと地に足をつけた商売しようと思てまんねん。
甚・ふうん、何を始めるんや。
喜・たこ焼き屋、しょうかと思うてまんねん。
甚・へえ、今日はまたえらいまともな話やないか。けど、たこ焼き屋言うたら、きょうびぎょうさんあるで。
喜・ぎょうさんあるということは、商売としてやっていけるっちゅうことでっしゃろ。
甚・そらそうやけど、特徴がないと、すぐに潰れてしまうで。
喜・そら、大丈夫です。
甚・どないすんねん。
喜・たこ焼き言うたら、まあ、日本のファストフードでっしゃろ。
甚・そうやな。
喜・ファストフード言うたら、やっぱりスピードが命でっしゃろ。
甚・まあ、そうやな。
喜・そやさかいに、お客が来た瞬間、たこ焼き、出しまんねん。
甚・そんなん、どこでもやってるで。
喜・いや、お客が注文する前に出しまんねん。
甚・道をたんねに来た人にもか?
喜・へえ。六つ六万円。
甚・ぼったくりのたこ焼き屋か。
喜・いや、値段はまた考えよと思てまんねんけど、今日の相談は、店を出す場所でんねん。
甚・ああ、そうやな。どんな商売でも、場所は大事や。ほんで、どこぞ、あてしでもあんのんか?
喜・へえ。すぐそこの横町でんねん。
甚・横町て、そないな場所があったかいな……
喜・ほれ、横町の角に電柱が立ってまっしゃろ。
甚・ああ、野良犬がようしょんべんかけてる、あの電柱な。
喜・その電柱が、まあ前にある空き店でんねん。
甚・ちょっと待ちや。食いもん屋始めんのに、野良犬がしょんべんする電柱が前にあったら、衛生に悪いやろ。
喜・そやさかいに、安う貸してもらえますんや。
甚・なんぼ安い言うても、あそこ、電柱が邪魔で客も入って来にくいで。
喜・いや、その電柱が大事でんねん。
甚・なんでや。
喜・その電柱に、たこ焼き屋の看板が出せますやろ。
甚・そうやけど、あの電柱…… いや、やっぱりあかん。
喜・なんででっか?
甚・あの電柱から、ぎょうさん電線が出てるやろ。
喜・それがどないしまして。
甚・時期も悪い。
喜・おめでたい正月でんがな。
甚・正月やから、タコが引っかかる。
デンデン