昨日の伝楽亭における三題噺のお題
『忘年会』『宝くじ』『A案〈ええあん〉』
男・こんばんわ。
マ・いらっしゃい。
男・ママのおかげで、忘年会、盛り上がった。ありがとう。
マ・あら、よかった。
男・ビンゴゲームが大盛り上がりで、得意先からもらった饅頭やせんべいの他に、ママからアドバイスしてもらって宝くじを景品にしたのが好評で、忘年会が終わっても楽しみやって、皆、喜んでくれた。
マ・それはよかったわ。
男・けど、部長が大荒れで、難儀したわ。
マ・部長って……
男・ほら、あのセクハラ、パワハラ部長。
マ・ああ。
男・あの部長、今年、奥さんと子供に逃げられて、裁判の結果、離婚が成立したところに、仕事で大きなミスをしてしもうて、まあ、それをいつものように部下に責任をなすりつけてくれたんやけど、さすがに上もわかってて、どうやら来年の人事異動で左遷させられるみたいで、そら、みんな喜んでるんやけど、その部長が、もう大荒れで、二次会のカラオケでも一人で三波春夫の『俵星玄蕃』から始まって次々歌いまくるだけやのうて、落語まで一席やり出す始末で、それでも二次会終了後になんとかタクシーに乗せて、さっき、ようやく帰したところやねん。
マ・まあ、それはたいへんやったね。
男・うん、けど、まあ、ママにはお世話になったんで、とにかくお礼にと思うて、これ。
マ・まあ、ありがとう。何? お饅頭?
男・ビンゴゲームの景品がボクにも当たって、せっかくやからママに食べてもらお、思うて持って来たんや。ちょっと、食べてみて。
マ・あら、千鳥屋のお饅頭ね。(開けて一つ食べる)……これ、なかなか、ええあん〈A案〉やないの。
部・(酔っぱらって入ってくる)ママ〜! いてるかあ!
マ・いらっしゃい。
男・部長!
部・ママ! 聞いてるかあ!
マ・何?
部・わしな、離婚したんや。
マ・あら。
部・そやさかいな。わし、ママを嫁にしたるわ。わしの妻にしたるで。ありがたいと思え。
マ・まあ。
部・ほんでな、ママ。
マ・はい。
部・わし、ママの名前、知らんねん。名前、何や?
マ・りかです。
部・そうか、りか。ほんでな、りか、わしな、りかのこと何も知らんねや。趣味は何や。
マ・カラオケです。十八番は俵星玄蕃。
部・お、わしと趣味、合うな。ほんで、料理は?
マ・この商売をしてますから。
部・そらそうやな。洗濯や掃除は?
マ・一人で長いこと生きてますから。
部・そうやそうや、旦那がいてるかどうかを先に聞かなあかんかったんやけど、独身やねんな。ずっと、独身か。
マ・ええ、まあ。
部・ほんで若うに見えるんやな。そらええがな。ほんで、歳、いくつや?
マ・今日は忘年会でしたやろ。そやさかいに、歳、忘れました。
デンデン