新明解四字熟語辞典(三省堂)を眺めておりますと、なんと!
『蒟蒻問答』
が出ているではありませんか!
にわか坊主になった蒟蒻屋の六兵衛さんが旅の禅僧に禅問答を仕掛けられて困るどころか、得意の蒟蒻で返答すると、禅僧は勘違いして退散するという、江戸落語の古典ネタで、上方では蒟蒻屋が餅屋になって『餅屋問答』という古典落語になっています。
四字熟語と申しますと、たいがい中国の聖人の言葉ですとか、ちょっとした逸話がついて学校で先生がそれを披露しながら、中高の受験にもよく顔を出すという、インテリジェンスな代物だと思っていましたが、落語のタイトルが肩を並べているとなると、黙って見過ごすわけにはいきません。
当然、上方ネタのの『餅屋問答』も辞書に掲載されているかと頁を捲ってみましたが、これがアアタありません。
ついでに、『地獄八景』『小言念仏』『大名将棋』『質屋芝居』と思いつく限り調べてみましたが、落語に関係があるのは『開口一番』ぐらいで、他に見当たりません。
そこでまあ、もう一度『蒟蒻問答』をみると、作家、石川淳氏の小説の一文が引用例として記載されています。
どうやら、四字熟語辞典に掲載されるかどうかの分かれ道は、著名な作家の作品に引用されているかどうかというところのようですので、
「そんな『質屋芝居』なんか、いったい、誰が見に来るんだ」
とか、
「いくら好きでも、そんな『大名将棋』ばかり指してたんじゃ、上達はおぼつかないよ」
とか、
「墓参りにきたときぐらい、その『小言念仏』はやめろよ」
とか、
「さあて、それでは世にもまれなる『地獄八景』をご覧にいれましょう!」
とか、
宮部みゆき先生や村上春樹先生が作品の中で使ってくださると、次の改訂版には落語のネタもたくさん四字熟語辞典に掲載されるのではないかと思います。
もちろん、受験によく出る四字熟語として、『蒟蒻問答』や『地獄八景』なんかが出てくると、勉強も面白くなるのではないかと……
(え? 教育によろしくない……)