新明解四字熟語辞典(三省堂)を眺めておりますと、『名作の中の四字熟語』というコラム欄がところどころに挿入されております。
福沢諭吉先生をはじめ、明治時代の文人知識人の作品の中に、どれほど四字熟語が使われていたかを紹介したコーナーです。
例えば、明治の文豪、夏目漱石先生の名作『吾輩は猫である』には、『蒟蒻問答』も含めて80以上の四字熟語が登場しています。
さすがにそれほど使えなくても、日常会話なんかで少しぐらい使えると、かっこいいのではないかと思っていらっしゃる方も少なくないのではないかと思います。
でも、辞典の最初から一つずつ覚えて、それが使えるかと言うと、なかなかそうはいかないのが、現実ではないかと思います。
そこで、昨日の『三昧』のようにな言葉を押さえておくと、まとめて覚えられてしかも使うチャンスも多々あるのではないかと思います。
「最近、どう?」
「うん、『読書三昧』の日々を送っているよ」
てな使い方をすると、なんとなくインテリジェンスに見えます。
同様に、『千万(せんばん)』も使えます。
『遺憾千万』『奇怪千万』『笑止千万』『唐突千万』『卑怯千万』『不埒千万』『無礼千万』『迷惑千万』と、いろいろあります。
「今回、このような事態に至り、誠に遺憾に思います」
てな映像はよく見ますが、これを、
「今回、このような事態に至り、誠に『遺憾千万』に思います」
とすると、テレビ映りも心持ちよくなるのではないかと思います。
あるいは、お笑い番組を見ていて、
「まったくもって『笑止千万』!」
とか、自分にはどこが面白いのかわからないのに、他の家族みんなが笑っていたら、
「『奇怪千万』……」
とか、ドラマなんかで内部告発に及んだ社員が出てきたら指差して、
「会社のことも考えない、『不埒千万』な奴じゃ」
とか、怪人一人に仮面ライダーが二人掛かりで戦うシーンには、
「二対一とは、『卑怯千万』なり!」
とか、別れ話を彼女に持ち出されたら、
「え? それはあまりに『唐突千万』!」
とか、タメ口をきく部下や後輩には、
「おのれ『無礼千万』な奴め!」
とか、上司に責任を擦り付けられそうになったときには、
「『迷惑千万』!」
とか、いっぱい使えると思います。
もう、これだけで『千万三昧』で楽しめます。
「最近どう?」
「うん、『千万三昧』の日々を送っているよ」
なんてやっぱりインテリジェンスかと思いますが、『千万三昧』の結果、人間関係がどうなるかというところまでの責任までは取れませんので、その点だけはご了承ください。