名言の分かれ道

先日、詩人を目指しているという若い女性のお話を伺う機会がありました。

お客から感じたインスピレーションを言葉にして詩を書くという、ストリートの、自称詩人に、その女性は詩を書いてもらったそうです。

そのとき、彼は、

「最近は、名言や格言めいた言葉を詩に書いている」

てなことを言ったそうです。

それを聞いて彼女は、名言や格言というのは、その言葉を口にした人が名言になることを意図したものではないのに、このおっさんはそんなことにも気づいてないし、何より、他人の名言や格言に頼るなんて、オリジナリティがないで!」

と、腹で思うても口には出さなかったそうです。

 

たとえば、

「規則違反をしてどこが悪い。誰がそんな規則を作ったのだ」

と、口にしたのはベートーベンだそうですが、それが名言として残っているのは、そういう考え持って、いくつも名曲を残したからです。

これを、そこらのおっさんが口にしても、名言として残ることはありません。誰も相手にしてくれないどころか、下手をすると警察に通報されてしまいます。

 

昨今、田中角栄氏の言葉を集めた本が人気を博しているようですが、それらは名言として後世に残すために発せられた言葉ではなく、普段から角栄氏が考えていることがそのまま言葉になって、聞いて感銘した誰かが残しただけです。

 

ですから、

『後に名言となって残るのが大人物の言葉で、己の言葉を名言として残そうとするのは小物の徒労である。』

ということが言えるかと思いますが、これが名言として世に残されるか徒労に終わるかということは、アタシが大人物になるか小物のままか、という点にかかっているんでしょうね。きっと……