筒井康隆先生の《蘊蓄》の技法〜ゴルゴ13編〜

他の小説指南書では触れられていないけれど、筒井康隆先生の『創作の極意と掟』(講談社文庫)にございます項目の一つが、

 

《蘊蓄》

 

でございます。

 

〈蘊蓄というものは本来、文学作品にあっては表現の多様性に奉仕するものでなければならず、エンタメ系の作品にとってはあくまでリアリティ乃至面白さに奉仕するものでなければなるまい。蘊蓄が豊富であればあるほどそれは作品が最も必要とする部分だけを効果的に述べることによって、神の宿る細部となるのであろう。経済機構のことを知る目的で城山三郎をよむ人はいないのだ〉

 

と述べられた上で、それでも小説の本筋と関わりなく蘊蓄を面白く読ませる作家、たとえば丸谷才一先生や池波正太郎先生の名を記されています。

 

小説に限らず、

 

《蘊蓄》

 

の扱いには注意が必要です。

 

コミュニケーションの場において、自ら語る誘惑に負けてはいけない一方で、相手のそれには耳を傾ける姿勢を見せなければなりません。

 

本日9日のゴルゴ13の日めくりカレンダーには、

 

《長話は無用だ。YESかNOで答えろ》

 

とあります。

 

これに、

 

《余計な蘊蓄はいい》

 

てな台詞がついていた話もあったように思いますが、相手に蘊蓄を語らせない力量がない者には、丸谷才一先生や池波正太郎先生のような、蘊蓄を面白く読ませる、もしくは聞かせる術が必要かと思いながら、それができないアタクシは、ただただ傾聴に徹するばかりであります……

 

え?

(ウソつけ! 人の話も聞かんと、しょうもない話ばっかりして、皆をうんざりさせてるやないかい!)

 

失礼いたしました……