水戸黄門改造論

水戸黄門SP』は、やはり相変わらずの『水戸黄門』でした。

たとえば、金山奉行が怪しいという話を御老公が耳にされた段階で、どういう訳かすぐに弥七が金山奉行を探っていました。

たとえば、あっさり捕まった御老公一行を、柘植の飛び猿が、おなじみのその怪力で壁を破って助け出しますが、御老公一行があっさり捕まった理由が、見ていてわかりませんでした。

飛び猿の見せ場を単に作る為のシーンではないかと飛びざるを……いえ、言わざるをえません。

しかも、そのあと、

「弥七さんに頼まれて……」

てな言い訳をして彼は立ち去ります。

はたまた船着き場の女将の入浴シーンには必然性がなく、あるいは船で去る紀国屋文左衛門を見送るのに、どうして海を背にしていたのでしょうか。

 

もし、新しい視聴者の獲得を考えるなら、昔の視聴者を喜ばせるだけの御都合主義的番組作りは止めるべきでしょう。

通常のドラマで、こうした作製姿勢が見られた段階で、私はチャンネルを変えるか、もしくはテレビを消すところですが、文句を言いながらも結局最後まで見てしまいました。

おかげで、福本清三さんを私はどうやら見逃してしまったようです。

 

ですから、『水戸黄門』の視聴率が落ちたのは、《勧善懲悪》が廃れたからでは決してありません。

  

過去の成功に捕らわれず、むしろそれを捨てるところから始めなければ、『水戸黄門』の再生はありえないのではないかと思います。

ただ、わずかに、御老公の抜き打ちシーンには目を奪われました。

ここにこそ、新しい『水戸黄門』のヒントがあるように感じました。

ならばいっそ、肉体改造を施して不死身の剣豪と化した御老公が、助さん格さんをもはねのけながら立ち回りを見せる、

『水戸の暴れん坊黄門 八代目フランキー』なんてどうかと思ったりしていますが……

(悪家老や悪代官より先に懲らしめられそうです……)