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三題噺・おにぎり

昨日の『能登川寄席』《三題噺の会》にいただきましたお題。

〈次期アメリカ大統領トランプ〉〈コンビニエンスストア〉〈おにぎり〉

 

妻・はあ、今日も、帰りはおそいんかな…… 高校からつき合い始めて15年。別れたこともあったし、いろいろあったけれど、それでも3年前に結婚して…… 仕事が忙しいことはわかってたけど、この1年ほどは、ぜんぜん、話もしてくれへんようになったし…… やっぱりあかんのかな…… 

夫・ただいま。

妻・あ、おかえりなさい。今日も仕事、大変やったね。何か食べる? それとも先にお風呂に入る?

夫・ああ、やっと、終った。

妻・仕事、一段落ついたんやね。

夫・ああ。ごめんな。この1年、朝早うから夜遅うまで、すっかり迷惑かけて。

妻・ううん。

夫・いや、実はな、〈次期アメリカ大統領にトランプ〉さんが決まってから、日本に来るまでの日程やその準備に追われていたんやけど、今日、無事にアメリカに帰国したんで、まあ、少しはゆっくりできるようになったんや。ほんまにこの1年、ごめんな。何にも話せへんかったんやけど、なんせアメリカ大統領の訪日や。トップシークレットやったさかいに、家族にも話せへんかったんや。

妻・ああ、そうやったんや。

夫・うん。まあ、トランプさんがお帰りになってもたさかいに、もうしゃべってもええようになってな。

妻・どんなことがあったん?

夫・まあ、TPPやらアメリカ軍の駐留費用の問題やらあるけれど、いずれにしても日本のことをようわかってもらわなあかんさかいに、まあ、そういった現状も知らせるとともに、日本の文化にも触れてもらおうと、お茶席に案内したり、そうそう、ちょうど大相撲の本場所中でもあったさかいに、それも見てもうたりしたんや。

妻・へえ、お茶にお相撲、トランプさん、喜んではった?

夫・まあ、喜んではったけれど、こっちで用意したところばっかりやのうて、AKB48見たいとか言われて、連れて行ったら、〈おにぎり〉したいてなことを、なんや日本語で言うんや。

妻・おのぎり?

夫・そうや。なんのことかわからさかいによう聞いたら、シェイクハンド、握手をしたい、手ぇ握り、したい、てなことで、まあ、あほらしい話やが、それが済んだら今度は、小腹が空いた、て言わはって、ほんで手近な〈コンビニエンスストア〉に入ったんや。まあ、アメリカ発祥のコンビニエンスストアが日本でどないなってるんやというところを見てもらうのも悪くはないやろと思うて入ったんやけど、そこで、おお! TPP! っちゅうて声を上げはったさかいに、何やと思うて見たら、新発売! とってもピーチパイ、ちゅうお菓子や。そんで、結局、おにぎりを一つ買うことにしはったんやけど、そのTPPのお米の問題にも関わることやさかいに、こっちはちょっとどきどきしたんやけれども、まあ、そのまま、最後の予定、大相撲の観戦、結びの一番に何とか間に合うて、それがまあ熱戦で、むすびが一番、なんてこと言うて、トランプさん、ご機嫌で帰っていかはった。

妻・そう。それはよかった。ほんまにほんまに、お疲れ様でした。

夫・そやから、お腹がすいた。食事、できてたら、食べさして。

妻・うん。用意できてる…… あ、そうや、ちょっと、待ってて。

夫・用意できてるんやったら、それでええで。

妻・これ、食べて。

夫・なんや、おもぎりやないか、今、握ったんか。

妻・うん。改めて、むす(結)んでみたの。

                                   デンデン