『濹東綺譚』や『腕くらべ』『あめりか物語』『ふらんす物語』などで知られる、大作家、永井荷風先生の創作ノート2冊が見つかったという報道がありました。
小説と戯曲13作品や随筆の下書きが残されたノートで、校正はもちろん、作品の構成や題名の変更、中には戯曲として発表された作品の下書きが小説の形で記されてあったというものまであったそうです。
小説の読み手よりも書き手が増えたと言われて久しいかと思いますが、文学賞、新人賞と冠せられた公募小説は、ネット時代にあって増えた感もあり、また、小説の書き方や文学賞、新人賞の穫り方を指南する書籍を見かけることも珍しくありません。
でも、そうした指南書をなぞって書き上げたとしても、
「今までにない小説を読みたい」
という選者の眼鏡にはかなわないことを考えますと、やはり、独自の方法を模索するしかないように思いますし、また、永井荷風先生に限らず、構成から校正にいたる手間を惜しまずに習作を重ねる以外に手はないように思われます。
また、天から作品が降りてくるなんてことはないものと心得て、『相棒』(テレビ朝日)の杉下警部よろしく、
「細かいところが気になるのが悪い癖」
を身につけて、納得のいくまで調べることが、創作には肝要かと思います。
永井荷風先生の創作ノートが見つかったというニュースから、改めて創作の心得を思い出させてもらったように思いますして、これを例によって例の友人に話しましたところ、
「キミの場合、それをすぐに忘れて、どなたかのそんな資料が発見されたら、また思い出す、というのが、悪い癖……」
杉下さ〜ん!