《前据後恭》は故事の通りか?

昔、中国で自分を売り込んで諸国を歩き回った遊説家蘇秦が貧乏になって帰ってくると、妻や兄弟は彼をばかにしましたが、のちに六国連合の宰相になって帰ってくると、今度は恭しく給仕をするので、その理由を問うたところ、嫂が、

「あなたは位も高く、お金持ちだからです」

という故事から生まれたのが、

 

《前据後恭(ぜんきょこうきょう)》

 

という四字熟語で、

 

〈前まで傲慢な態度で接していたのに、九に態度を変えて相手にこびへつらうこと〉

 

という意味で、

 

「とかく世間の人は成功者の人格ではなく、地位や富によって前裾後恭の態度をとりものだ」

 

という例文を新明解四字熟語辞典(三省堂)は記しています。

 

西郷隆盛さんの家族には、

 

《家人に偉人なし》

 

だったてな話をどこかで耳にしたように思いますが、実績を残さなければせいぜい〝残念な人〟と評されるのが現代ではないかと思います。

 

借金があってチームメイトのユニフォームや用具を盗んで捕まったプロ野球選手は、入団時こそ周囲から恭しく扱われたかもしれませんが、

 

《貧すりゃ貪す》

 

で、掌を返すように、世の中は、

 

《前恭後据》

 

なんてことになるのかもしれません。(そんな四字熟語はありませんが……)

 

いずれにしろ、実績を出さなければ〝恭〟は得られないところが、辛いところでございます。

 

これを例によって例の友人に語りましたところ、

「キミの場合、人格にも問題があるからだよね」