「アタシはダメな人間なんだ」
と思ってしまうと、生きるのがいやになります。
でも、そのおかげで謙虚に人と接することができるようになれます。
感謝の言葉も忘れなくなります。
工夫もします。
それとは別に、もう一つ、
『人の痛みや辛さがわかる』
つまり、
『共感できる』
という能力が身に付きます。
ところで、男と女の間には、広くて深い川が横たわっているそうです。
だから、お互いに分かり合えることなどありません。
「部長にゴルフに誘われたから明日は行けなくなったって、さっきからそう言ってるだろ。どうして分からないんだ……」
どう言われても、妻には理解できません。
反対に、よく言われる、
『いやよいやよも好きのうち』
という言葉を信じた男が、
「話が違う……」
と当惑するのは、女性を理解できない男の典型的な例だと思います。
そんな男に、
「どうしてアタシのことを分かってくれないの?」
と言っても、それはないものねだりというもので、女性を理解しているつもりで、
「お前の気持ちはよくわかっているよ」
とささやく男や、
「妻のことはよくわかっている」
と口にする夫は、恋人や妻に関して自分が誤解していることに気がついてさえいないのかもしれません。
同性同士、親子兄弟であっても、相互に理解し合えるとは限りません。それでも人間関係をなんとか維持していられるのは、お互いに理解不能だということを認識しているからです。
ただ、世の中を眺めておりますと、他者を理解することができないことを承知のうえで、
「さぞ、辛かったでしょう。寂しかったでしょう。哀しかったでしょう。実は、私も……」
という共感のできる人は、たくさんの人から手を差し伸べられているように思います。
異性からの好感度も、案外、それで高くなるかもしれません。
自分をダメな人間なんだと思っている人ほど、この《共感する能力》が発揮できるのではないかと思います。
そう考えると、自分をダメな人間だと思っている人は、人間として大切なことを知っている人だと言えます。
『いやよいやよも好きのうち』
に、何度も翻弄されている人間が、
「三回続けてその話題か!」
というお叱りの言葉もなく、調子に乗って書き連ねてしまったことでございます。
「やっぱり女心がわかってないわよ!」
と思われたとしても、どうぞ、ご容赦願いたいと存じます。