お題は、『クリスマス』『数学』『一攫千金』です。
客・こんばんわ。
マ・いらっしゃい。 ……あら、今夜は一人?
客・ええ。
マ・クリスマスイブなのに、彼と一緒じゃないの?
客・だって、奥さんや子供と過ごさないといけないでしょ。
マ・そっか。だから、こんなに早くから一人で来たのね。……何か飲む?
客・やっぱ、クリスマスの夜は、シャンパンかな。
マ・じゃあ、景気よく開けましょうか。……メリークリスマス!(シャンパンの栓を開ける)
客・メリークリスマス! ありがとう。ママ。
マ・そうそう、忘れていたわ。今日から年末まで、先着5名様に福引きをしてもらうことにしたのよ。あんたが一番だから、ちょっと引いてみて。(抽選箱を出す)
客・あら、うれしいけれど、どうかしら…… アタシ、くじ運と男運はよくないから。(そう言いながら引く)
マ・(それを手に取って)大当たり〜! になるかもよ。
客・何?
マ・年末ジャンボ宝くじ! 当たると10億円。はい(と渡す)。
客・(受け取って)一攫千金ね。
マ・そう。下らない男なんかもういらないわよ。
男・(ママの後ろから)下らない男で悪いんだけど……
マ・(振り返って)あら、どうしたの?
男・ここ、教えてほしいんだ。
マ・え? これ? ……ああ、これはね、ここを計算してこう展開すると……(書く仕草)ほら。
男・ああ、なるほど。 ……ありがとう。(引っ込む)
客・ママ、今の人、息子さん? ぜんぜん知らなかったわ。
マ・やっぱりそう見える?
客・え? 違うの?
マ・(親指を立てて)新しくできた、下らなくない男。 ……あれで、心機一転、大学を受けるんだって。
客・へえ、それで、今の?
マ・数学。
客・それにしてもすごい。ママが若い男と同棲しているなんて。
マ・なに、そっち?
客・あ…… ごめんなさい。大学入試の数学の問題が解けるなんて、アタシ、見直しました。
マ・これでも、高校のときは数学が得意だったのよ。
客・わかった。数学の先生、きっと若くてかっこよかったんだ。
マ・そうね。だから、退学して彼と一緒になったんだけどね……
客・へえ、やっぱりすごい! あ…… でも、今は一緒じゃないんだ。
マ・結局、彼は奥さんとよりをもどしてね。やけくそになっていくらかもらった慰謝料全部で宝くじを買って、それで、このお店がオープンできたってわけ。
客・ああ、だからアタシにも宝くじ?
マ・ウソよ。
客・ええ! ウソだったの?
マ・フフフ……
客・もう、ママったら…… でもなんだかもったいないな。
マ・何が?
客・小さなスナックのママにしておくのは。
マ・どうして?
客・だって、数学の問題もあんなに簡単に解いてしまうんだから。
マ・数学の問題なんて簡単よ。人生の問題に比べたらね。
デンデン
(笑うところがないぞ! これで三題噺か!)