三題噺・クリスマスの夜の問題

お題は、『クリスマス』『数学』『一攫千金』です。

 

客・こんばんわ。

マ・いらっしゃい。 ……あら、今夜は一人?

客・ええ。

マ・クリスマスイブなのに、彼と一緒じゃないの?

客・だって、奥さんや子供と過ごさないといけないでしょ。

マ・そっか。だから、こんなに早くから一人で来たのね。……何か飲む?

客・やっぱ、クリスマスの夜は、シャンパンかな。

マ・じゃあ、景気よく開けましょうか。……メリークリスマス!(シャンパンの栓を開ける)

客・メリークリスマス! ありがとう。ママ。

マ・そうそう、忘れていたわ。今日から年末まで、先着5名様に福引きをしてもらうことにしたのよ。あんたが一番だから、ちょっと引いてみて。(抽選箱を出す)

客・あら、うれしいけれど、どうかしら…… アタシ、くじ運と男運はよくないから。(そう言いながら引く)

マ・(それを手に取って)大当たり〜! になるかもよ。

客・何?

マ・年末ジャンボ宝くじ! 当たると10億円。はい(と渡す)。

客・(受け取って)一攫千金ね。

マ・そう。下らない男なんかもういらないわよ。

男・(ママの後ろから)下らない男で悪いんだけど……

マ・(振り返って)あら、どうしたの?

男・ここ、教えてほしいんだ。

マ・え? これ? ……ああ、これはね、ここを計算してこう展開すると……(書く仕草)ほら。

男・ああ、なるほど。 ……ありがとう。(引っ込む)

客・ママ、今の人、息子さん? ぜんぜん知らなかったわ。

マ・やっぱりそう見える?

客・え? 違うの?

マ・(親指を立てて)新しくできた、下らなくない男。 ……あれで、心機一転、大学を受けるんだって。

客・へえ、それで、今の?

マ・数学。

客・それにしてもすごい。ママが若い男と同棲しているなんて。

マ・なに、そっち?

客・あ…… ごめんなさい。大学入試の数学の問題が解けるなんて、アタシ、見直しました。

マ・これでも、高校のときは数学が得意だったのよ。

客・わかった。数学の先生、きっと若くてかっこよかったんだ。

マ・そうね。だから、退学して彼と一緒になったんだけどね……

客・へえ、やっぱりすごい! あ…… でも、今は一緒じゃないんだ。

マ・結局、彼は奥さんとよりをもどしてね。やけくそになっていくらかもらった慰謝料全部で宝くじを買って、それで、このお店がオープンできたってわけ。

客・ああ、だからアタシにも宝くじ?

マ・ウソよ。

客・ええ! ウソだったの?

マ・フフフ……

客・もう、ママったら…… でもなんだかもったいないな。

マ・何が?

客・小さなスナックのママにしておくのは。

マ・どうして?

客・だって、数学の問題もあんなに簡単に解いてしまうんだから。

マ・数学の問題なんて簡単よ。人生の問題に比べたらね。

                                 デンデン

(笑うところがないぞ! これで三題噺か!)