「今日は、私の誕生日です」
そう言うと、ある人は、
「『諸人よ、思い知れかし、おのが身の、誕生の日は、母苦難の日』仏教では、誕生日はお母さんに感謝する日で、誰もが共通の母の日をわざわざこしらえる必要などないのに、クリスマスのケーキやバレンタインのチョコレート、節分の巻き寿司のように、新たに作られた母の日というのは企業の販売戦略の一環でしかない。一年を通して何とかの日というのが、どれほどたくさん作られているのかわからないが、それらの多くは、ほとんど宣伝効果、販売効果のないメモリアルデーになっている。この状態は、現在の日本社会の経済状況が……」
「あの……、今日は私の誕生日なんですけど……」
別の人に告げると、
「昔、日本には、誕生日を祝うという習慣はなかった。これは、年末に除夜の鐘を突きにいくのではなく、カウントダウンに参加するのと同様、日本の伝統文化を蔑ろにするもので……」
「今日は、私の誕生日で……」
さらに別の人は、
「その歳で、いまさら誕生日もあるまい」
「今日は、私の誕生日……」
「最近、花粉症でね。君、大丈夫?」
「私の誕生日……」
「それがどうした?」
誕生日は、周囲の人のコミュニケーション能力の分かる日……
でなかったら、
誕生日は、自分が周囲にどう思われているかが、よく分かる日……
もしくは、
自分が、普段、周囲にどう接しているかが確かめられる日……
いえ、
自省する日……
さて、どれにしましょうか。