女性の落語・落語の女性

日本には、電車でもバスでもタクシーでもトラックでも、運転手という仕事は、かつて男性の職業でした。

それが今では女性の姿も珍しくありません。

講談も、その発生からつい先頃までは、男性の職業ではありましたが、東京では男性より女性の講談師が多くなっています。

好男子が美女に取って代わられた仕事だと言えます。

 

落語家を名乗る人間も、長く男性に限られていました。

ですから、噺も男性の視点から描かれたものが多く、その中で女性は、絶世の美女か、さに非ざるかのいずれかということになっておりまして、笑いの対象となりましたのは、たいがい、さに非ずの方で、たとえば、閻魔の庁で死んで幽霊になれる女性と化け物だったら認められる女性の小噺があったり、たとえば、人三化け七(人間三分化け物七分)てな表現をされる女性が出てきたり、たとえば、鼓のような女性とたとえられてそれはどないなおなごかと申しますと、後ろを向いて、よー、前見てポン! ……と、まあ、いろいろあるわけでございます。

 

念のために申し上げておきますが、このブログをお読みくださる女性は、皆さんは、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、という方ばかりでございます。きっと……

あひるの火事見舞いみたいな歩き方をされる女性も、これは男性が描くところの落語の世界に限られているわけでして、アマチュアも含めて、昨今、女性の噺家が増えて参りましたからには、今度は男がぼろをかすのように言われる新しい落語も創られることと思います。

 

でも、よくよく考えてみましたら、喜六を代表に、男というもんはアホなもんや、ということが、伝統文化として根付いておりますのも、やはり落語であります。

 

「夫を何やと思うてるんや!」

「夫やなんてあほらしい。あんたらその下に、どっこい、つけときなはれ」

「おっとどっこい」