『悪の哲学』坂口安吾先生「湯の町エレジー」

堕落論』をはじめ、世の中の常識やら固定観念やらをことごとく、しかも実に気持よく覆してくださった坂口安吾先生の、悪に対する考え方です。

 

温泉旅館を荒し回っていた泥棒の捕縛から、

〈人間の胸の底にひそむ「無邪気なる悪」に対する憧憬」

が、

〈だまされる快感と一脈通じるものであり、あるいは表裏をなすものである〉

と喝破し、

〈悪というものがなくなれば、おのずから善もない〉

と断じておられるところは、まさに、

〈ショッカーのいない世界に仮面ライダーは存在はない〉

てな、アタクシの思想と同じかと思いますが、さらに、

〈人間は本来善悪の混血児であり、悪に対するブレーキと同時に、憧憬をも持っているのだ〉

という点は、悪に手を染めながら善事を行い、また善を施しながら悪事をはたらく、という池波正太郎先生の『鬼平犯科帳』のテーマそのものでもあります。

 

さらに、

〈善悪は共存し、幸不幸は共存する。もっと悪いことには、生死が共存し、人は必ず死ぬのである〉

と続けたあとで、

〈人が死ななくなった時、人生も地球も終わりである〉

と記されたところは、坂口安吾先生の面目躍如といったところかと思います。

 

そうです、科学が発達して、人間が死ななくなったら、地球は終わります。

だから、まだ地球が滅亡することはありませんが、人類が死ななくなるより、滅亡する可能性がはるかに高いのではないかと……

 

ぼか! どす! ごん!