自己開示しない会話術

先日、〝でぶしょう〟だとおっしゃる女性とお話しする機会がありました。

「そんなふうにはぜんぜん見えませんよ。スリムなスタイルですよ」

と、さっそくボケを申し上げましたところ、

「いえ、家から出ない出不精なんですが、人と会うのがどうも苦手で……」

と真面目にお答えになる方で、

「まあ、いろいろ気を遣いますからね」

なんて当たり障りのない応答をいたしましたら、

「いえ、自己開示をするのが、どうも……」

「自己開示なんて、アタクシ、してませんでしょ」

「ああ、なるほど、確かに……」

「相手の話に、頷きながら、それはすばらしいとほめたり、それはどういうことなんですかと質問したりするだけで、相手は勝手にしゃべってくれますよ」

と、自己開示しない会話術を伝授いたしましたところ、

「それって、かなり高度な会話術ですよね」

「いや、そんなたいしたことはありませんよ」

「そうはおっしゃっても、どこかで学ばれたんじゃありませんか」

「まあ、学んだというほどのことはありませんが、昔から落語には触れておりまして…… そうそう、七月に奈良で『三題噺&大喜利の会』を開きますんで……」

などと言いながら、出来立てのチラシを渡しましたところ、

「ほんとうに、相手が勝手に自己開示してくれるんですね」

                                  デンデン