過ってイスを蹴ってしまった人に……

イスに腰掛けて仕事をしているときに、後ろを通った人が、過ってそのイスの足を蹴ってしまったとします。

そのとき、蹴ってしまった人が謝るのがほとんどかと思います。

なにしろ、座っていた人を驚かせた上に、仕事を中断させてしまったのですから。

イスを蹴られてしまった人は、たいて不機嫌な表情を見せて、

「気をつけろ」

でも、痛い思いをしたのは、過って蹴ってしまった人です。

ですから、腰掛けて仕事をしているときに過ってイスを蹴ってしまった人に不快な顔は見せず、

「ああ、痛かったでしょ。足、大丈夫ですか?」

(間違っても、イス、大丈夫ですか、と言ってはいけません)

と声をかけると、相手も、

「ええ、大丈夫です」

と笑顔で返してくれます。

特に、女性にはそうするように心がけています。

それで、その女性とはよりよい人間関係が築けますし、あわよくば……てな、うれしい想像までしてしまいますが、これがおっさんだとつい、

「われ、何してくれんねん!」

と眉間に皺を寄せて文句を言ってしまいます。

まあ、おっさんとあえてよりよい人間関係を築こうとは思っていませんし、女性が笑顔を見せてくれたら、少々辛いことがあっても耐えていけますし……

(え? おっさんにもそうすると、辛いことも少なくなるだろうって?)