明治大学文学部の齋藤孝教授の『語彙力こそが教養である』(角川新書)には、語彙力を涵養するための方法が記されています。
古典から近代の名著、漢籍、歌舞伎、歌詞にいたるまで、語彙力を養成する題材の中に、落語が示されています。
著名な齋藤孝教授に示唆されるまでもなく、アタクシどもの世界に住まい致します輩は、皆、落語で使われる語句を自在に駆使しております。
あほなことを言うてるもんには、
「あんさん、普通のお方やおまへんな」
くだらんアイデアを言い出すもんに、
「それ、具体的にどないすんねん」
と尋ねると、
「さあ、それをあんたに相談にきたんや」
アナゴがおいしいてな話題になったら、
「ワタイ、アナゴよりオナゴがすき!」
カラオケで歌い手より声高に合いの手を入れるもんには、
「やかましわい!」
もう、いくらでも出て参りますから、アタクシども、そろって語彙力があるということになりますが、こんな落語の言葉や言い回しを世間様で使いますと、不審者のように見られます。
今までは、
「ワレワレは、一般的な人たちとは異なる世界に住んでいるんだから仕方ない……」
とばいかり思い込んでおりましたが、齋藤孝教授の『語彙力こそが教養である』を拝読いたしまして、
「なんだ、ワレワレを奇異な目で見る人たちって、実は語彙力のない、無教養な人たちなんだ」
と、納得しました……
え?
(それは語彙でも教養でもない。単なる身内で受けてるだけのネタや!)
……ええと、ツッコミを入れられて困ったときには……
「ばんざ〜い! ばんざ〜い!」
え?
(それも、知ってる人しかわからへんぞ!)