〈武田が来たりて火を放つ〉
です。
この、
〈〜が来たりて〜を〜〉
というフレーズは、
たとえば、折原一さんの『鬼面村の殺人』の改題前の、
『鬼が来たりてホラを吹く』
をはじめ、
『悪魔が来たりて恋を知る』
『悪魔が来たりて武を歌う』
『悪魔が来たりて風が吹く』
『盗人来たりて蝶は舞う』
など、小説や歌詞などのタイトルに多数使われているようです。
これらは、多分、横溝正史先生の
から拝借しているものと思われます。
この小説自身、映像化されるほど面白い作品ではありますが、何と言っても、このインンパクとのあるタイトルの果たす役目は大きいかと思います。
だからこそ、天下のNHK大河ドラマのサブタイトルにも応用されているのだと言えます。
とはいえ、
〈〜が来たりて〜を〜〉
というフレーズが、横溝正史先生の発明によるのか言うと、そうでもないように思われます。
漢詩に、
《明月来たりて相照らす》
という一節があるそうで、おそらくは、このフレーズからの発想ではないかと思いますが、それを横溝正史先生に確かめることはできません。
ただ、よく使われるこのフレーズを、日常会話に応用することはできるかと思います。
たとえば、視察に訪れた社長がつい放屁してしてしまったことに気がついたなら、
「社長が来たりて屁を放つ」
セクハラ上司には、
「部長が来たりて尻を触る」
仕事から帰宅して、
「ねえ、聞いてよ」
と妻が言うのへ、
「妻が帰りて愚痴をこぼす」
今度は仕事から帰宅して、
「まったくやってられないよ……」
とおっとが言うのへ、
「夫が帰りて文句言う」
え?
(人間関係壊すようなこんなフレーズが使えるか!)